あなたは発酵の海で、また何かに気づきました。
微生物さんたちは、ただ夢中になって食べているだけではありません。
食べる前に、食べようとしているものに、何かふりかけているようです。
あなた:「ねえ、微生物君、何をふりかけているの?」
微生物:「え?ああ、これ?
これは僕たちが自分で作る特別な『溶かす粉』だよ。
僕たちは口がないから、
大きな食べ物はそのままじゃ食べられないんだ。
だから、まずこの粉をふりかけて、
食べ物を体の外でドロドロに溶かしてから吸い込むんだ。」
あなた:「えーーー!体の外で溶かすの? じゃあ、噛んだりはしないの?」
微生物:「噛む?歯がないからできないよ。君たちはどうやって食べているの?」
あなた:「僕たちは、食べ物を口に入れて、
歯で何回もよく噛んで細かくしてから飲み込んでいるよ。」
微生物:「えーーー! 歯で? ずっと口の中でクチャクチャしてるの?
それはなんだかちょっと大変そうだね。」
あまりの食べ方の違いに、二人は少しの間、お互いにちょっと考えていました。
微生物が言いました。
「君たちは食べ物に何かふりかけて食べたりしないの?」
あなた:「ああ、するよ。
アイスクリームにトッピングをふりかけたり、
ご飯にふりかけをかけたり。」
微生物:「ふりかけ? ふりかけって?」
あなた:「ああ、ふりかけって、味のする粉みたいなやつ。
僕日本人だから、日本ではみんなよくご飯にふりかけているよ。」
微生物:「へえー。そうなんだ。
僕たちの『溶かす粉』は、自分で作る『酵素』っていう特別な粉なんだ。
君たちのふりかけとはちょっと違うけど、
食べ物に何かかけるのは似ているね。」
あなた:「本当だ。でも、体の外で溶かすのはやっぱり不思議だな。」
そして二人はお互いに不思議そうに目を合わせました。
微生物が思いついたように言いました。
「でもさ、よく考えたら、やっていることは似ているんじゃないかな?
君たちは歯で噛んで食べ物を細かくするんでしょ?
僕たちは歯がない代わりに、
この『酵素』の粉で食べ物を細かく溶かしているんだ。
どちらも、体が吸収できるように小さくしているってことさ。」
あなた:「そうか! やっている目的は同じなんだね!
食べ物を細かくするために。それならわかるよ!」
微生物:「でしょ?
この酵素の粉、すごいんだよ。
大きな食べ物も、あっという間にドロドロになるんだ。
ちょっと見てて。」
微生物はそう言うと、
自分の体から『酵素』の粉を出し、
食べようとしている物にふりかけました。
するとみるみる食べ物が溶けて小さくなっていくのが見えました。
あなた:「おお!本当だ!魔法みたいだね。」
微生物:「だろ?
君たちの『噛む』っていうのも、僕たちから見たら魔法みたいだけどね。
でも、体が栄養を取り込むために小さくするっていうのは、
僕たちも君たちも同じなんだ。」
あなた:「うん!僕たちはやっぱり似たもの同士だね。」
微生物:「そうだね。」
二人は嬉しそうにニッコリしました。